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「私」の否定

 

◆私は自分の顔や性格に不満がない。小さいことを言えばここをこうしたいなんてものは多々あるけれど、とはいえ生得的なものについてコンプレックスを感じたことがほとんどない。それでも、それを否定されるとなると、グサリと心にきてしまう。

 

◆炎上の聖火リレーとまで揶揄されるVTuber界隈でまたしても大火が燃え上がり、一人が引退にまで追い込まれた。その原因は当人の使うかなり独特な「訛り」だったという。

    VTuber(2Dアバターを用いたYouTube配信者)を知らない人も多いと思うので端的に説明する。3ヶ月前にデビューした新人配信者の使う「訛り」が、同じ事務所の先輩配信者のそれと酷似していた。これについてその先輩配信者から苦情が入り、事務所の運営も巻き込み新人配信者に対して標準語へ「訛り」を矯正するよう指示されたという。新人配信者は「訛りは生得的なものであり易々とは変えられない」と抵抗。結果は引退に追い込まれた、という次第である。

 

◆真相は定かではないが、運営発表により少なくとも「訛り」が原因で一悶着あったことは確かだという。配信者同士の諍いについてまで話すことはないけれど、この運営の対応はあまりに酷いものだと思えた。

    私は九州の育ちで、今でこそ抜けてしまったが、当時は九州方言をばりばりに使っていた。中学生になって関東に引っ越してきたとき、よく周りの人に方言を指摘されたものだった。幸いにも友人たちはいい人ばかりで、それをむしろ楽しんでくれたので私も嬉しかったけれど、もしあのとき方言を否定されていたらと思うと怖くて仕方ない。

    私は九州の方言に誇りがあるし、また小さい頃から方言フェチで、他地域のそれについてもたくさん学んだ。言葉は生きている。個性であり文化だ。それが否定されるというのは、到底看過できない。

 

◆訛りに限った話ではない。顔の造形や身長、最近話題のジェンダーについてなど、生得的な特徴というものは多々ある。そしてそれらは、現代の医学をもってしてもどうにもならないこともあるし、まして、世にいうところの「正常」に向けて矯正するべきものでもない。

    所属事務所の運営が「訛りを標準語に直せ」というのは、大袈裟に言えば「君はブスだから整形手術をしなさい」「身長が低いからインナーヒールを履きなさい」「性別違和があるなら手術を受けなさい」というようなものだ。そんなことがあっていいか?

 

◆自分らしさを表現することはとても難しいが、積み重ねてきた過去は確かに存在する。それを配信者たちは放送を通して伝え、私はこうしてどうにか文面に残そうと、血眼になって言葉をひねり出している。

    自分らしさの否定は表現の最大の障害だ。炎上の多いVTuber界隈でも今回は特に許せなかった。女性配信者の彼氏バレみたいなしょうもないことで炎上するのはどうぞご勝手にという感じだけど、どうかこんな愚行だけは二度としないでほしい。