ちょっと長めのツイート

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アップグレード・キモオタク(前)

 

 

    キモオタクは未経験の塊である。未経験が瞬足を履いて(コーナーで差をつけて)いるようなものである。「何でもは知らないよ、知ってることだけ」などと猫耳美少女のセリフを引用しといて、その実知らないことの方が多すぎるのがキモオタクだ。

    そして僕も例に漏れずキモオタクである。これはそんなキモオタクが意を決して縮毛矯正をしに美容室に行った話である。どうぞ笑ってくれ。

 

 

    4月某日。僕はサンマルクでコーヒー片手に小説を読む文学青年の真似事をするイキリオタクになっていた。森見登美彦太陽の塔」。マジで面白いのでみんな読んでくれ。その中に飾磨(しかま)というキャラクターがいる。変人な彼はこんな言葉を言い残す。

 

    「フルモデルチェンジする」

 

    当初はその語感に笑うだけだったが、なぜか読後もその言葉だけがひっかかっていた。

   

 

    後日、飲みのお誘いがあり中学時代の旧友4人と会う機会ができた。ちょくちょく会うメンツなので新鮮味こそないが、ふと思い立った。みな服装に気を使い新しい趣味を持ち始めていた。

    大学生になってバイトをし自由に使える金が入る今、彼らは好き好きにいろいろなものにお金を使っていた。対して僕はさしあたって趣味がないので貯金が貯まる一方だ。彼らは呆れた。「そんなに貯めて何に使うのだ」と。

 

 

   結局こんなことを書いた。

お金を使うということ - ちょっと長めのツイート

    書いた以上は何か買わなきゃなぁ。今欲しいものって何だろう。そんなことを考えているうちに、旧友たちの言葉と飾磨の言葉がつながった。僕は貯めたお金でフルモデルチェンジするべきなのでは?アップグレードするべきなのでは?

    

 

    そう思った僕は購入リストの作成に取りかかった。最優先事項は言うまでもなく服である。大学生になって一度も買ってないし何かしら買おう。そこで始めて、自分がどれだけ服を持っているのかもよくわかっていないことに気づく。本当に服に無頓着なキモオタク。

    結果タンスをひっくり返すと服がわんさか出てきた。思ったより持ってた。衝撃である。そんなわけで早々にリストから「服」の文字が消えた。

 

 

    それから靴や財布、椅子や収納ケースなどいろいろと買い購入リストを着実に潰していった。今月は収支が見合ってない、素敵だ。こんな生活が毎日続いたらどれだけ幸せだろう。5000兆円欲しい。

    次は何が必要だろうかと風呂上がり髪を乾かしているときのことだった。これでもかと踊り狂う前髪。湿気に殺された天パ。あぁそういえば、もうじき梅雨がやってくる。そっと天パが息を引き取る季節が。

    テレビではCMが流れていた。菜々緒がサラッサラのストレートヘアをぶんぶん振り回して「戻れない」「もう戻れない」と言っている。僕もそっちに行きてえ……。

 

 

    かくしてキモオタクは縮毛矯正をかけることを決意した。