ちょっと長めのツイート

お気持ちを配信しています

すばらしい日々

 

◆この退屈な日々だってすばらしいものだと思えるような。些末な言葉だって、その1つ1つが私の血肉たりうるのだと、そう思えるような感性を磨いていきたい。

 

◆オタクを集めてシーシャを吸い、夜の新宿を歩き、ほろ酔いのなかでお気持ちを吐露する会が行われた。

写真が美しいので「は? 随分シャレた休日してんなオタク?」といった感じだけれど、会話にのぼることといえば、推しがどうとかインターネットがどうとか、あるいは恋愛がどうとか。はたから見ればしょうもないことばかりだけれど、それが楽しくって仕方ない。

 

◆旧知のオタクから「ジビエ食いに行かね?」のお誘い。返しに「分子ガストロノミーはどう?」なんて。 そういえばあいつんチに喧嘩商売全巻とはねバド! 置きっぱなしだな、あれも取りに行かないと……恋人か? 

    突然やってくる麻雀の誘いとか、遠方に住む悪友からの「東京帰るので会おうよ」とか。不定期に飛んでくるLINEの通知。多かれ少なかれ必要とされていることに充足を覚え、承認欲求が満たされていく。

 

◆恵まれていると思う。幸せだと思う。孤と個を尊ぶ性格で、1人でいることに苦痛を感じない私にも、一緒にいることが楽しい人がこんなにもいる。なんと幸せなことだろう。

    私は彼ら彼女らに応えられているだろうか。全力でこの余興を楽しめているか。相手を楽しませているか。私だけがひとりよがりに幸福を享受するようなズルは、きっと、していないよな? 

 

◆『いつのまにか僕らも 若いつもりが年をとった』 まだ23歳とはいえ、たとえば中高生のパワフルさなんかには、とてもじゃないけどもうついていかれない。それでも。

『すべてを捨てて 僕は生きてる』それくらい強い意気で、日々をぶっ生きていかなくちゃ。平気で徹麻したりオールで飲んだりできるような若さも、もう息絶えそうなんだから。

 

『君は僕を忘れるから その頃にはすぐに君に会いに行ける』

 

私が彼ら彼女らを忘れないように、私もまた君たちの記憶に強く私を残していきたいんだ。

 

 

縮んでいく偶像との距離

 

◆お前の全てを売っていけ! お前がコンテンツになるんだよ!!!

 

◆インターネットでの顔出し・名前出しに若者の抵抗がなくなって久しい。かく言う私も、本名で検索されると顔も名前も出てくるガバガバ仕様。本当は嫌だったけれど出さざるをえなかったところがあったので……。

    万単位のフォロワーを抱えるインフルエンサーは、マーケティングに欠かせない存在らしく。1ツイートがウン十万の稼ぎになることもあるとかで、お前は8年間何をツイートしていたんだという気持ち。

    人は十人単位の諭吉に弱いので、こうしたことが話題になると口々に「ずるい、ずるい」と叫ぶのである。もれなく私もである。しかし一方で、そうなりたいかと言われると、まあなりたいけれど、尻込みするところもある。

 

◆スパチャ機能で稼ぐツールはYouTubeに留まらない。あまり詳しく知らないけど、アイドルの方がよく使ってる印象のSHOWROOM? やイチナナ? だっけか。liverとして生活や思想を配信することで、面白ければファンが付き、投げ銭が飛んでくる。

    あるいはブログのようなアフィリエイトによる稼ぎ方も一昔前から流行っている。インターネット全盛の今、お金は思った以上に電子的に世を巡っている。誰か私の口座に突然5000兆円振り込んでくれねえかなあ~~~(当ブログは全く持って無銭です)。

 

◆当然のことではあるが、ただ配信するだけでオールオッケーなわけではない。投げ銭をもらうには「ファン」が必要だ。昨日まで街に溶け込むモブキャラだった人が「ファン」を獲得するには、相応の努力や才能が必要になる。

    その努力がどれだけ難しいか? HIKAKINさんがいい例だ。毎日自分を写した実写動画を自分で編集し、アップロードするなど、冷静に考えたら狂気の沙汰としか思えない。

    VTuberなどはさらに大変だ。本職の合間を縫って生配信したり、空いた時間もTwitterエゴサしていいねを飛ばしたり。人によって活動頻度はまちまちと言えど、中には「いつ寝てるんだ」と心配になる人さえいる。

 

◆「ファン」にとって投げ銭をしたくなるような相手---言うなれば「アイドル」だろうか---との距離は、インターネットの登場によりあまりに近くなりすぎた。どれだけプライベートの時間を仕事に割いても、「ファン」の前では絶対的な偶像であり続けた80年代のアイドル。しかし、ももクロやAKBグループの登場によりその存在は手を握れるほどに近くなり、そして今は、時間を問わずリプライを送れるほど、身近な存在になった。

    どうだ、いっちょliverになって一旗揚げてやろうかと思ってる人たち。おはようからおやすみまで、四六時中「ファン」のことを考え続ける存在になる覚悟が、はたして持てるか? 私には、その覚悟は持てない。

 

◆これだけ偶像との距離や接し方が大きく変わってきたというのに、恋愛忌避の風潮だけがいまだに残り続けているのもおもしろい。アイドルにとって、恋愛というのは最後の「プライベート」なのかもしれない(カップルユーチューバーなどもいるが)。

    お前の全てを売り飛ばせ。一挙手一投足をコンテンツたらしめろ。liverたちを日々悩ませるそれは、この世で最もハードな「お仕事」なのかもしれない。

 

 

 

2019comics

 

◆今年も残すところ二ヶ月。進捗いかがですか? 私はダメです。

 年末なので恒例の今年観たコンテンツシリーズまとめ・漫画版です(昨年のはこちら)。今年は映画をほとんど観なかったのが悔やまれるな。代わりに漫画は、10ヶ月で300冊読んでいた。日に1冊、いいペースだ。

 以下では今年読んだ漫画で特に気に入ったものを短い感想とともに列挙していきます。「今年読んだ」なので古い漫画も出るけど、そういうものだと思って見てください。

 

◆まだ1, 2巻しか出ていないけれど……

・潮が舞い子が舞い/阿部共実

f:id:prooooove:20191101134427j:plain

  昨年も激推しした「月曜日の友達」の作者、阿部共実の最新作。帯の通り、田舎町の高校生の何でもない日常が描かれている。その「何でもなさ」がまた途轍もなく愛おしく、可愛らしい。 

 

・僕の心のヤバいやつ/桜井のりお

f:id:prooooove:20191101135607j:plain

 いつもTLでうるさくしてすいません。毎週ネットで読んでるのに買ってしまった。陰キャ市川と陽キャ山田のじれったい恋模様。それ以上の言葉は蛇足というぐらい甘酸っぱいです。2巻30話「僕は溶かした」は最高でしたね。

 

◆ついに完結!

やがて君になる/仲谷鳰

f:id:prooooove:20191101140041j:plain

 そう! これを書いている段階では私はまだ最終回を読んでいない!!! (11/27 最終巻発売)。修学旅行のときの佐伯沙弥香にはやられましたね……。どんな最終回を迎えるんでしょう、マジでネタバレは勘弁してください。

 

バイオーグ・トリニティ/大暮維人 舞城王太郎

f:id:prooooove:20191101140655j:plain

 完結は去年なんだけどね。つい最近まで積読しててやっと読み終わったんだけど、めちゃくちゃ面白かった。SF的な設定が思いのほかしっかりしているし、大暮先生の絵がはちゃめちゃに美しく画圧が強い。世界を巻き込む壮大な「恋」の行方を、ぜひ見届けてほしい。

 

◆話題作はやっぱりおもしろい

薬屋のひとりごと 猫猫の後宮謎解き手帳/日向夏 倉田三ノ路 しのとうこ

f:id:prooooove:20191101141823j:plain

 次に来るマンガ大賞を取ったのはスクエニ版です。これは小学館から刊行(内容は原作準拠でスクエニ版と差はないらしい)。なろうの出だからって避けているあなた! マジでおもしろいから偏見はやめた方がいい。異世界転生したりしないから。古き中国の歴史や伝統、薬学知識に基づく謎解き。読んでるだけで教養も得られるお得な漫画。

 

私の少年/高野ひと深

f:id:prooooove:20191101143050j:plain

 真修くんのあまりに純粋でひたむきな「子ども」らしい姿。それに対し「大人」として接しようと尽力する聡子。全てのサブキャラが聡子と真修くんのこの「対比」をくっきりと際立たせている。読み進めていくごとに辛く、苦しく、切なくなっていく。本当に素敵な漫画です。

 

 ◆激推し(頼むから読んでくれ……)

・呪術廻戦/芥見下々

f:id:prooooove:20191101141152j:plain

 正直今ジャンプで一番推せる。ストーリーや世界観の構成においてジャンプの王道マンガの骨組みをきっちり継承しており、しかしその中で芥見先生独自の色をしっかりと出している。五条悟の能力から見える頭の良さ、夏油傑から見えるストーリーメイキングの巧みさ、芥見先生はすごい。ジャンプではDグレ以来の正統派ダークファンタジー

 

・違国日記/ヤマシタトモコ

f:id:prooooove:20191101142726j:plain

  今年最推し。孤独を好む女性・高代 槙生(左)と、その姪であり両親を事故で失った田汲 朝(右)と不思議な同居生活。人がどのように生き、誰を愛し、憎むか。人との繋がりとは、何が友情で愛情なのか……。本当に素晴らしい漫画ですよ、うまく言えないけれど。

 

◆以下、おもしろかったものを箇条書きでさらに列挙。

ミステリと言う勿れ/田村由美ーーー子育てと父親のネタがツイッターで話題になりましたね。少女漫画にしては珍しいミステリもの。

地獄楽/賀来ゆうじーーーなかなか見かけない画調が美しい。宗教的でエキゾチックな世界観に惹かれます。

セトウツミ/此元和津也ーーー実写映画化もしましたね。1話のギャグのおもしろさから予想もつかない最終話の衝撃。一番「読み応えのある」ギャグ漫画だった。

亜人ちゃんは語りたい/ペトスーーー美少女化亜人のほんわか系かなと思ってたら読み進めるごとにSFがしっかりしてきて、今特にすごく面白くなってきている。

 

 漫画、やっぱりおもしろいですね。人の妄想ってどうしてこんなにおもしろいんですか? 来年もばりばり読んでいきましょう。

8000日分の『かいこ』

 

◆あの日々の何日分を覚えているのだろうかなどと、懐古し回顧する毎日。今や未来に潤いは足りず、過去を頼りに糸を紡ぐ蚕。……さすがに、言葉遊びがすぎるな。

 

「懐古厨」という言葉が悪口として扱われるようになって久しい。故きを温ねて悪いことはなかろうと胸を張っても、お前は新しきを知っていないだろうと言われ、しょんぼり。

    懐古厨筆頭、字は蚕とまで自負する私だ(?)。 しかし、『時間ははっきりとした悪意を持って僕の上をゆっくりと流れていき』a、不要と判断されたデータは惜しげもなく焼却炉へ、跡形もなく。日々傍若無人に押し寄せる「新しい」を前に、容量が決まっている出来の悪いおツムじゃ、まあ、致し方ない。

 

◆日常系アニメ、久しく見ていないけれど、本当に他愛もない会話こそが愛おしくて。しかしホントの世界では、そういう他愛もないことから順に、抜け落ちていく。

    私はどんな授業を受けていただろう。級友たちとどんな会話をしていただろう。約8000日の人生の内で、一体何日分の愛おしさを覚えているんだろう。いやむしろ、一体何を忘れてしまったというんだ!

 

◆思い出せるのは、アオハルに気が触れてた彼ら彼女らの可愛らしいメロドラマばかり。茗荷谷にあったボロなカラオケ、後夜祭に打ち上がる花火、水圧がおかしい体育館の冷水機、ずっと蒸し暑かったシンガポール……。劇物指定をくらいそうな記憶ばかり心根にしみついて。特異な刹那のワンシーンだけがフラッシュバックして、その前後はまるで思い出せない。

    脳みそは「文脈」を記録しない。たった一行の刺激的なセンテンスだけを恣意的に選びとって、大事に大事に温める。だから人は懐古を躊躇わない。今がどれだけで退屈で無様だったとしても、記憶に留まっている過去はどのシーンも「楽しかった」のだから。

 

10年後の私が今を思い返そうとしたら。そう思うと怖くて仕方ない。ここ最近、後世に残すレガシーたりえるような刺激的な出来事が、はたしてあっただろうか。

    そう。刺激は何もいい方向ばかりではない。悪い方もまた刺激。幸いにも恵まれた友人関係の中で、辛い記憶はほとんど残っていないが、こんな能天気な私にも苦い記憶や恥ずかしい過去くらいはある。だが、今は怖い。ともすれば酸いも甘いも噛み分けられないまま、20歳前後の記憶がすべからく没落してしまうのではと思ってしまうほど、明るい出来事がまるでない。他人の色恋ばかり追いかけていた大学生の4年間。彼らのことははっきり覚えているのに、私自身のことはほとんど覚えていない。私、大学に通ってたっけ?

    私はこれからも懐古厨でありたい。10年後も「あの頃は楽しかった」って言えるおじさんになりたい。そうして若い人たちに「またこの人は……」って言われるのもやりたい。その未来のために、今、何をしよう?

 

 

a: 「秒速五センチメートル/新海誠」より

数cmの恍惚

 

ポッキーゲーム、したことありますか?

 

◆結果です。ご協力ありがとうございました。

 

Twitterで『響け! ユーフォニアム』の久石奏と月永求がポッキーゲームをしている絵が流れてきた。制服に身を包んだ彼らが、お互いに相手の手首を掴み、初々しく顔を赤らめたりして。

    ああ、高校生だあ~って思わず感動してしまった。ポッキーゲームって、そういうもんだよなあ。

 

◆私自身には、ポッキーゲームをした記憶はない。たぶん今だったら、相手が誰であろうとしれっとなしてしまうだろう。もちろん最後までいったりはしないけど、極めて冷静に。だってそれは所詮ゲームだから。みんなそれをわかってるから。それによって得られるはずだった『ドキドキ』とか(死語か?)は、もう感じないだろうな。

    恥と性欲が発散しきれていなかった青い高校生の頃なら、あるいは違ったんだろうか。いつからこんなつまらない男になった? 何が私をこんなにひねくらせた? 

 

◆相手が相手だったらまた変わるんだろうか。『超ッッッ』がつくほどの美人だったら、思い焦がれて夜も眠れないような相手だったら、あるいは話は変わってくるんだろう。

   しかし別の知見として『クラスメイト』という属性が興奮の素になりうるんだろうな、なんて。いつかのポエムにも似たようなことを書いたけど、何でもない人との特殊なシチュエーションには、言い表しがたい興奮がある。普段他愛もないことで笑いあう友人と、急に顔が接近する。もうあといくらで唇が接する。数cmの恍惚は、確かに愛おしいし、興奮する。

 

◆そういえばあの頃、同性同士でポッキーゲームをしているのを見たことはある。別に私がしていたわけでもないのに、妙に気分が昂揚した。

    大学生はすぐ酒の勢いでそういうことするからなあ。今だったらなんだ、お通しの揚げパスタでやったりするのか? 違うんだよなあ、そうじゃねえんだよなあ。情緒がない。

    日常に突如現れる特別、最近そんなシチュエーションとはご無沙汰だ。恍惚が愛おしい。恍惚が羨ましいよ、高校生。とりあえず、ポッキー買おうかな。

    

イマジナリーサマー

 

◆「渡る川の流れ」「手には虫かご」など。夏らしい情景って、どこかノスタルジーがあるのに実際そんな記憶はないのよね。

 

◆前の記事で「どうせ今年の夏も何もしないんだろなあ」なんてボヤいた。

    しかし8月が終わって振り返ってみたら、今年は山にも行ったし海にも行ったし、会いたい人には会ったし、インターンも行ったし、年相応の夏を普通に堪能してた。研究が進んでないということを除けばよお!

    夏、してたじゃん、私。だったらどうして、「夏を堪能した」っていうハートワーミングな感情が残ってないのかしら。渡る川の流れを見なかったから? 手に虫かごとか持たなかったから?

 

◆ひとつ考えられることとして、いつも通りの「楽しいこと」はしたけれど、普段はしない「新しいこと」はやらなかったから、というのがある。山も海も行ったことはある。会いたくて会った人だって、別にこの夏限定のプレミアムパーソンというわけでもない、いつでも会える。夏だからこそやれること、この夏こそは始めたいことに、結局手を出せなかった。

    歳を取ると新しいことに手を出すことがとても億劫になり、また怖くなるらしい。正直それはひしひし感じている。どれもこれも「やってみたい」で終わってしまって、一向に行動に移れない。

 

◆Q:なぜか → A:時間がないから

 

◆無論それは言い訳でしかない。デキる人は時間を捻出する。私はすぐスマホをポチポチいじる。そういうところでチリツモ式に差が出てくる。

    やろうやろうと気だけ走って、腰掛けた途端に「今じゃない気がする」と脱力する。そうして今年も夏が過ぎ去っていく。この夏こそはと思い描いたイマジナリーサマーを叶えられないまま、安心安全の「楽しい夏」を堪能する。つまらない人間だな。

 

◆そうは言っても夏は帰ってこない。また1年待つしかない。あんなに鬱陶しかった暑さも、陽光も、秋めいた今となっては物足りなくて、なんだか侘しい。

    今年の夏こそは! って夏が来る直前に思い立つのがそもそも遅いんだろうな。今からだよ。今から来夏を思って行動するんだよ。きっと来夏には内定もゲットして、もっと心穏やかに夏を堪能できるはずなんだから。

    とはいえ秋も冬も堪能したいしね。まずはそれを考えないと。そのために今は、過ぎ去っていく夏を思い返しましょう。皆さんの夏は、いかがでしたか? 憂鬱と気だるさはサイダーで割って、話をしましょうよ。

    

 

23才の夏休み

 

◆夏が来ただって 今年も 僕はきっと何もしないです。しないです。

 

◆今年もまた一つ歳を取りまして、中坊のころよく歌っていたかまってちゃんのあの歌あの歌詞のそのままになってしまった23歳の夏休み。そも23歳になっても夏休みがあるなんて思ってもいなかったけど、ありがたいことにいまだモラトリアムを享受している。

     同期の多くは就職し、給金を得ている。夏休みなんてない。風に乗って流れてきた噂には、中学のとき嫌っていたアイツが、結婚してもう子どももいるよ、あくせく働いているよと、そう聞かされた。

    私はどうだ。ろくすっぽ研究もせず、高給なバイトだけをして、麻雀で大敗し、シーシャでバッドをキメている。溜まり溜まった陰鬱をTwitterに吐き出して、最高の夏をインターネットで台無しにしている。

 

◆ある晩、悪友から電話があった。仕事に就いた悪友は、ひたすらやるべきことを、やらねばならないことをこなし続ける日々に辟易していた。

「私には、何かをやろうとすればやれるだけの才が人よりはある、その自覚はある。でも、それをするだけのエネルギーがわかない。日々に忙殺されて、それだけで精一杯になる。わかるでしょう? だって君も同じなんだから」

    悪友め、誰よりも私を知りすぎおって。長くを過ごした家族でさえ気づいていない私の怠惰を、いとも簡単に見抜いてくる。

 

◆何者かになりたい気持ちばかり先走って、何者にもなれない無力に打ちひしがれて、追い打ちをかけるように今年もまた、夏の日差しはひどく容赦がない。これだけの金と時間があってもなお、生きているだけでエネルギーは目減りし、やりたいことを見つけるための余力が残らない。

    『やりたいこととやるべきことが重なるとき、世界の声が聞こえる』 かつて銀河美少年に教わった言葉は胸に刻まれてこそあれ、真価を発揮する日は、いまだやってこない。

 

◆今年もまた彼に会いに行く。もう三年経った、何が変わっただろう。彼に会って何を言えばいいだろう。ああ、まあ、私周りでのことなら彼に言わなきゃいけないことは山のようにあるし、彼のことだ、おおいに喜んでくれるだろう。あの悪どい笑顔がありありと目に浮かぶ。

    私も誰かと付きあったら人が変わるかしらと聞けば、悪友は言うのだ。「幸せな君は、きっと誰よりもつまらないよ」 んなこと知ってんだよとは言えなくて、夏。